ユバールの星空

忘れたくないキラメキを、拙い言の葉でそっと閉じ込めて

ゆりでなる♡えすぽわーる1巻感想

セールで一巻を買って読んでみたら面白かったので、二巻を読んで考えが変わる前に取り敢えず今の感想を簡単に残そうと思う。

 

あらすじはまんま引用

わたくしの(心の)余命はあと1年!
それまでに作り上げるの…
最高の「百合スケッチブック」を!

高校卒業と共に政略結婚が決まっている心。
そんな結婚など「死」と同様。
死後の癒しのために
街中で見かけた少女たちを対象に
あらゆる百合を妄想する!
「この世界には36億の女性がいるわ
つまり、この地球には
18億通り以上の百合があるといっても
過言ではないわ! 」

 

つまり百合好きによる百合作品といった感じだ。

 

 

「現実に百合を見出してスケッチ」する百合観察作品であり、その中にはいわゆる「広義的な百合」が登場する。

「百合」という言葉が持つ意味は人によって解釈も言葉に持たせる意味の広さも全然違う。人によっては「脇役でも男が出たら百合作品じゃない」とか、「女の子が出てなくてもこの感情の動きは百合!」とか、「現実に百合を見出すのは無理」とか、意見が180°違うのでまぁ大変。

自分も百合の原点が「女の子同士の恋愛」という点から逸脱したものも「これは百合」なんて言ってしまうこともある為、許容範囲は広いが人によっては引っかかるかもしれない(多分百合作品の感想書く時ここら辺の前書きは毎回書いてそうな気がする)。

 

前書きが長くなったが、このギリギリを攻めた危険球が、カップルのバリエーションの多彩さと自分の好みに合う人間関係の重苦しさを出していて、自分はこの作品のストロングポイントなのではと思っている。

例えば1話目で出てくる控えめ地味ガールが、相手のギャルの意中の男性と裏でデートしているBSS的展開は良い意味で期待を裏切られてドス黒さに痺れた。


毎回前後編2話形式、新しいゲスト百合カプが出て来るオムニバス形式で、前半でカップル紹介と妄想パート、後半で現実のカップルのその後が描かれていく。

妄想パートは「高校卒業と共に望んでもいない男性と家の事情で結婚することを勝手に決められた百合好きの主人公」が、現実で見つけた百合な二人を少ない情報から妄想していく。

現実パートでは妄想をいい意味でも悪い意味でも期待を裏切るような二人の実際の関係が開示される。

フィクションではあるが、妄想パートと現実パートの二段構えにする事で現実パートのシビアな展開がより「現実」っぽく感じられて、構成の巧さを感じた。

現実パートも全くもって百合ではない結末になる訳で無く、妄想パートのように都合良くはいかないけど「百合」に行きついている。と、自分は受け取った。

現実パートは百合アンソロのように「二人のその後は想像にお任せ」と締まるので、後味が悪かったり、一縷の希望が残っていたりしてとにかく妄想が膨らむ。

空きページに単行本描き下ろしと思われる、人物紹介欄が載っているのでそれもまた嬉しい。人間の性格は家庭環境に端を発していると堅魚は考えているので、一番上に家族構成や家庭問題が載っているのはとても助かる!

 

主人公の駒鳥さんは屈指の百合好きだが、相方の雨海さんはそれ以上に主人公に恋慕の情を抱いている(本人はあまり気付いていない?)

雨海さんは「彼女の幸せの為に」と彼女の百合スケッチに協力し時には近寄る虫を跳ね除ける。結婚を阻止しようと踠き闘う姿は、人の気持ちに対して傲慢とも一途で健気な愛情とも受け取れて、最終的にこの二人の関係がどうなっていくのか気になってハラハラしてしまう。

二人の出会いの過去編も気になるし、どうなるのか目が離せないし早く2巻読みたい。

 

あと何か上手く言えないんですが、こういう女性の顔の描き方がめちゃくちゃ好き…………………目かな、あと口。大きさのバランスが好き。