ユバールの星空

忘れたくないキラメキを、拙い言の葉でそっと閉じ込めて

レイジングループ 紹介&クリア感想(一部ネタバレあり)

お久しぶりです。堅魚です。

今回はホラーサスペンスノベルADV「レイジングループ」のクリア感想とゲーム紹介をしていこうと思います。

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 前半はネタバレ無しのゲーム紹介、後半はネタバレありのゲーム感想の構成で書こうと思っているので、興味があるよという方は前半でブラウザバックすることをおすすめします。

前半/ゲーム紹介(ネタバレ無し)

まず初めに「人狼ゲーム」はご存じだろうか?
別に知らなくても大丈夫、本編で分かりやすく説明がなされるので寧ろ知らない方が「人狼ゲーム」の面白さを一から知ることができて楽しめるであろう。
人狼ゲーム」を知っているのであれば、間違いなく楽しむことが出来るであろう。

その「人狼ゲーム」と和風伝奇ホラー要素を組み合わせた最高にエキサイティングなゲームがこの「レイジングループ」なのである。

刺さる人に刺さるように他の類似した作品名を挙げさせてもらうと、「ダンガンロンパ」シリーズのようなハイスピードでロジカルな議論バトルや癖の強いキャラクターの二面性だったり、「ひぐらしのなく頃に」のような田舎の不穏な慣習や残虐な殺し合い、理不尽なループが好きな人は間違いなく好きになるであろう。

もう一つ直近で分かりやすい例を挙げると、2020年11月にソーシャルゲームFate/Grand Order」にて開催された期間限定イベント「虚数大海戦 イマジナリ・スクランブル~ノーチラス浮上せよ~」を執筆されたのが「レイジングループ」の作者amphibian先生なのである。
あの終始疑心暗鬼の絶えない空気観や、ロジカルな会話進行によってカチリカチリと伏線が噛み合っていき想像を裏切る結末へと落ちていく感覚が好きな人には是非勧めたい。

さて、本編の紹介としてまずは自分がプレイしていて一番巧いなぁと感じたゲームシステム面について紹介していこうと思う。

このゲームは、ループ作品なのである(一応公式の作品紹介にも書かれているのでネタバレではない)。
いわゆる「死に戻り」を駆使して情報を集め、惨劇の回避と村の秘密を暴いていくのが目標となる。

私はこの手の「死に戻り」ゲームをやるのは初めてだったので、何度も死ぬことで真相に近付いていくというシステムが新鮮であった。
私はこの手のアドベンチャーゲームではゲームでの臨場感を優先して、主人公が死なないよう正解の選択肢を選んでしまいがちだが、このゲームではガンガン死んで謎を解くカギを集めていくことが重要になってくる。
つまり死を繰り返すことで、ストーリーは分岐するのである。しかもストーリーは細かくチャート分けされており、やり直したい選択肢まで簡単に戻ることが出来るのでかなりストレスフリーになっている。
RPGをやるときは重箱の隅を突くようにダンジョン内の宝箱を隈なく漁り、探索中にイベントが強制発生したら「ああ待ってくれ」と嘆く自分のような神経質な人間には、「あえて不正解の選択肢を選ぶことが正解」というのはたまらなく快感だった。
この気持ちは、実際にプレイして一番共感されたい部分である。

この死に戻り能力が、人狼ゲームの構造や村の歴史などの要素と絡み合って物語を加速させていくのは読んでいて大変爽快感があった。

またループ物と人狼の配役シャッフル、この組み合わせが画期的過ぎるのである。
ループによる時間の積み重ねと、人狼の配役変更による人間性の多角的描写によって、最初は淡白に感じていたキャラ達が想像を上回るレベルで魅力的で愛おしい人物たちへと進化していくのである。
極限状態で二転三転していく人間性の生々しさと醜さから生まれる美しさを真っ新な状態で味わってほしいので詳しい紹介は避けるが、きっと読めばキャラの深みにどんどん溺れていくことになるであろう。

人狼ゲームの腹の探り合いや論理だった推理によるスリリングな駆け引き、奇妙な慣習の多い閉鎖環境と化した山奥で次第に人々が狂っていくサイコサスペンスの恐怖、時間巻き戻しによって明らかになっていく真相を是非貴方の手で見つけ出して欲しい。

ハードはPS vita/PS4/switch/PC/スマホと選択肢は豊富なので、自分に合った物を購入されたし。
スマホ版ではメインルート一つを無料で遊ぶことが出来るので、興味があるけど悩んでいるという方は試しにプレイされてみてはいかがだろうか。
自分はスマホを買い替えて容量に余裕があったのでスマホ版にしたが、合間時間にサクサク読めてとても便利だった。
スマホ版では、本編買い切りとエクストラコンテンツが五つ付いてくるプレミアムセットがあるのだが、自分は余裕があればプレミアムセットを是非買って欲しいと思う。
エクストラコンテンツに付いてくるシナリオには、本編アフターの裏話が語られており、ネタバレになるので細かいことは言えないが後悔はさせないとだけ書かせてもらう。

あと小説版も出ているらしいので、ノベゲは嫌だという方はそちらも(なんかセールスみたいになってきたな


後半/クリア感想(ネタバレあり

さて備忘録感覚でクリア感想を書こうと思っているが、良かったところがとにかく多くて困るので箇条書きで書けるだけ殴り書きさせてもらう。

春ちゃん
暗黒ルートがぶっっっちぎりで好き。
この作品固定カプの強火解釈のきらいがあって、ゲームパッケージも千枝実(相棒)と李花子さん(ラスボス)の二強って感じがあったけども、僕は二人で悪に堕ちていく過程が滅茶苦茶に好きで最後の落ちなかれ一枚絵で心を完全に射止められた。(夕景をバックに涙と笑顔と別れ、これ以上に美しい要素があるか、いやない)
僕は二面性の扱い方が巧いキャラが大好きで、そういうキャラの仮面に隠した本音をここぞというクライマックスでぶつけられると何も言えずにぶっ倒れてしまう。
暗黒ルートは人を惨たらしく殺すおおかみの役回りになったことで房石の独自哲学がよく顕れていて、「かみさま=正しさ」という本作で一番面白いと思った解釈(他はオカルト要素に逃げてもここだけは人狼ゲームのシステムにも絡めて現実的な解釈を出してきたのはとても好印象だった)へのとっかかりにもなっており、なにより悪い大人として春ちゃんをたぶらかしていく房石が得も言われぬ背徳感と甘さを醸し出していてとにかく読み心地が最高だった。
後から暴露モードを読むと、春ちゃんと貉は思考や感情の共有は出来ても別物なんだと判明して少し拍子抜けしたところはあるが、エクストラシナリオで上手いこと入れ替わりハイテンションギャグに仕上がっていたのはとても面白かった。

近望
かなり好きなポジションを常に居座っていたキャラ。人の心は分からないが、洞察力と頭の速さは天才的でおおかみになた房石を見抜いているほど。勘のいいガキだからこその報いを受けたり、有能故に勘当されていたりと作中での扱いは襤褸雑巾のようだが、惨劇を通して自分の中にも存在していた嫉妬から感情を少し学び、春ちゃんに歩み寄っていく姿はかなり好きだった。
エクストラシナリオが更にいい。ちょうどいい春ちゃんとのイチャイチャを見れる。

清之介さん
最初から最後まで人を貫きとおしたのが狂おしいほど好き。作中で一番好きまである。能里血統のキャラのロールが全体的に癖刺さって仕方なかった。上手く言語化出来ないが、この手のキャラが好きらしい。最初は普通に嫌な人かと思ったが、周りのヘイトを買うことでしか自分の立ち位置を確認できなくなっていたかなり不器用で可哀そうな人だった(過疎田舎だから自分の見せ方も難しい所であろう)。後からの掘り下げで人の上に立つ長者より、学者や医者としてふるまっている方が堅苦しくなく等身大の青年としてイキイキしていたのでさらに好きになった(房石と共同研究する回が好き)。
全ての宴でひとを引き当てとにかく人として生き残ろうと全体へ奉仕し続けるが投票されがちなところや、過去に一度奉仕()されたことが忘れられず初恋のラスボス女に愚直に愛を捧げる(たとえ村中に認識されていたとしても)ところも、とにかく人間臭くて愛おしかった。
エクストラシナリオではポンコツと化したラスボス女になっても、引き取ってくれる優しさが温かかった。末永く幸せになって欲しい。

橋本さん
凄い、人だったね(某フリーのカメラマン的な噛ませだと思ってた)。
本作の高IQっぷりを一人で体現しに来ていて、ループ無かったら普通に知恵比べで房石負けていたかもしれない。追加シナリオとかで房石と協力する展開とかも見たかったね。

ノベゲ基本積みがちな人間だけれども、このゲームは久々に一気にクリアしてしてしまった(記事にするのは半年後になったけど)。いや六か月って、冷静に考えたらヤバいな。ほんとにやることなすこと鈍いな。反省。
もうちょっと書きたいけれど、これ以上書き収めるのが遅くなると更にまずいのでここらへんで終わろうと思う。